07
選挙運動

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「我々救済党が、今回の総理大臣選出選挙に推薦致しますのは、獅子誠救済党党首でございます。私、永岡幹男は、彼とは私的に長い付き合いですが、彼が人を吸引する力を持っていることは確信を持って断言できます。また、救済党は、結成してからちょうど一年となったわけですが、この党をここまで大きくできたのは、ひとえに、獅子党首のすばらしい手腕によるものです。自分の立っているポストの大きさを認識できていない最近の総理大臣とは違い、立場をわきまえて指導者としての素質のある人物は、この獅子……」
 吸引力って何だ? 言っていることが、わけがわからないから却下。
「私ども再建党は、今まで、国民の皆様のお御支持のおかげで、財政再建法案の数々を成立させてきました。今、赤字国債を解消しなければ、私達の子孫が、さらに膨大な借金に苦しむことになります……」
 俺には子どもがいないから却下。
「私、北条留玖珠が、総理大臣になれば、安心です。みなさん、安心してください。泣かせる演説をして見せましょう。そう、この北条にまかせれば、不景気など、すぐにでも商品券をばらまいて吹っ飛ばしてしまいます」
 いくら、総理大臣が直接選挙で選ばれるようになっているからって、こいつだけは絶対に投票しない。商品券ばらまきは、とっくに使い古されたネタだし。
「今の総理大臣は、選ばれた経過が不透明でございます。密室で決められたとか。そんな決め方で選ばれた総理大臣を、私達国民は支持をしていいのでしょうか。私達国民に情報公開を。私達、透明党は、皆様の立場に立って考える政党です……」
 おまえら透明党代表も、選ばれた経過が不透明じゃないか。
 よって、却下。
「われわれ、富士山党は……」
 名前がダサイから却下。
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 まったく、どの政党だって、似たり寄ったりじゃないか。これでは、俺の一票がどこに入っても何も変わらない。
 確かに、総理大臣直接選出制が導入されてから、選挙が面白くなって、投票率は増加したかもしれないが、どの政党も、自分の政党から総理大臣を出そうと躍起になっていて、肝心の国民の立場に立っていない。
 政党の数は非常に増え、中学校の教科書には書ききれない量になっている。しかも、一年や二年で、吸収したり、合併したりする。
 おまえらは、業績の悪い私企業か?
 政策や行動に、信念や理念はないのか?
 総理大臣は最近はころころ変わるし、まるで素人みたいな政策ばっかり。一体、何を考えているんだ。
 こうやって俺は、毎回、普通の人なら感心を示さない政見放送を見ているが、今回限りで見るのを止めようかと思っている。
 確かに、何とか党が言っているとおり、最近の総理大臣は選ばれた過程が不透明だ。しかも、あまりやる気が感じられない。
 俺はコンビニに向かった。
 投票率は増加した。そりゃあ、コンビニで夜の十一時まで投票できるのだからあたりまえだ。
 俺は、手に今日の夕食の分のあんパンをもちながら、店の隅にある、ダサイデザインの政府の端末に、自分の識別番号を入力した。
 かろうじて見えるくらいの小さな字で、たくさんの政党の名前が画面に羅列されている。投票したい総理大臣候補のいる党の名前を指で押せば、投票完了。
 俺はまだ押していない。
 俺はどの政党の名前を押せばいいのか迷っていた。
 迷っても、結局どの政党にいれても、何も変わらない気がした。
 画面の右下に、『おまかせ』という文字があるのを見つけた。最近は、どの政党に入れればいいのかわからない人のために、投票率を伸ばすために、そういう事ができるのは知っていた。
 俺も、『おまかせ』でいいかな…。
 俺は『おまかせ』の文字を押して、レジで会計を済ませてから、パンをかじりながら家へ帰った。
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 三日後、俺の家に一通の封書が来た。手紙とは珍しい。俺はすぐに封筒を開けた。
「今回も『おまかせ』票が過半数を超えましたので、総理大臣は抽選で選ばれました。厳正な抽選の結果、あなたが今回の総理大臣に選ばれました。任期は二年です。拒否はできません。あなたは『おまかせ』を選択したのですから。まず、手続きですが……」
 俺が総理大臣?
 この国ももう終わりだな。

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創作日 6/30/2000
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