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コピー

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 隣の家に住んでいる人はきっとお金持ちだ。
 沙織はいつも自分の家と隣の家を見比べてそう思っている。
 二階にある沙織の部屋の窓から、隣の家の庭を見下ろす事ができる。庭では、大抵、小さな男の子が遊んでいた。
 沙織は男の子と一緒に遊んだことはない。
 本人は遊びたいのだが、沙織の母が反対するのだ。
「あの家は危ないから、関わってはいけません」
「あの男の子も危ないわけじゃないんでしょ?」
「………」
 沙織がそう言うといつも母は口をつぐんでしまう。そして、その後決まって、
「馬鹿なことを言ってないで、学校の宿題をしなさい」とはぐらかされる。
 でも、沙織は隣の家の男の子のことが気になってしまう。算数の問題を解きながら、心の半分は隣の家の謎を解こうとしていた。
 あのおうちはたくさんのものがあるみたい。わたしのうちにもたくさんのものがあるけど、みんなコピーされたもの。だけど、あの子のうちには、めずらしいものがたくさんある。なぜなんだろう?
 世間には物質コピー機なるものが普及している。必要な元素さえ揃えれば、どんなものでもコピーできてしまう。どの家にも一台はあり、たくさんのコピー品に囲まれて人々は生活している。沙織の家も例外ではない。しかし、隣の家は例外らしいのだった。どんな家にもないような玩具を使って、男の子は遊んでいるのだ。
 ある日、沙織は母に内緒にこっそりと隣の家の庭に侵入した。
 もちろん、男の子と遊ぶ為に。
 珍しい玩具で遊ばせてもらう為に。
 だが、どんなに探しても男の子の姿は見えなかった。あれだけ庭に転がっていたはずも玩具もなかった。
 沙織は途方に暮れて庭に立ち尽くした。
「どうしたのだね。僕の家の庭で何か探しものかい?」
 不健康そうな痩せた男が、いつのまにか沙織の前に立っていた。
「あの、わたし、いつもここで遊んでいた男の子と遊びたくて来たの」
 男は沙織を嘗め回すように下から上へと目線を移動させ、不気味な笑みを浮かべた。
「ああ、あいつのことか。見ているのに飽きたから、シュレッダーへ送ったよ。僕はちょうど次のものを探していたんだ」
 男の言っている意味は、沙織には少しもわからなかった。
「あの、なんでおじさんの家には珍しいものがたくさんあるの?」
 男は両手を後ろに回して、なにかごそごそと動いている。沙織は少し後ろへと下がった。
「ギブアンドテイクのネットワークファイル共有さ」
「言っている意味が、わたしわからないよ」
 すると、男は笑って、
「わからなくてもいいんだよ」と、言った。
「男の子はどこへ行ったの?」
 沙織は恐る恐る聞いた。
 しばしの沈黙があった。
「ねえ、お嬢ちゃん」
「?」
 男は沙織の後ろにすばやく回りこみ、白い布を沙織の口に押し当てた。沙織の意識は遠のいていった。
 男は芝生に倒れた沙織を抱えあげる。
「材料もあるし、お嬢ちゃんの身体をコピーさせてもらうよ、ふふ」
 男は沙織を肩に担ぎ、玄関の方向へ歩いていった。
「よし、これで交換用ファイルが増えた」
 男がボソリとつぶやく。
「コピーは実物がなくても、情報さえあれば良いのだ」
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創作日 9/28/2001
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