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ゲーム

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 目が痛い。
 目のすぐ裏を誰かに押されているかのようだ。
 頭も痛い。骨を内側から押しているような感じ。
 目の前がぼんやりとしている。まばたきを何度もしてもなおらない。
 ぼくの目の前には、四角い光がある。
 夕暮れ時の薄暗い部屋の中、テレビが光を放っている。
 ぼくには何が映っているのかわからなかった。
 何かが映っているのはわかっている。ぼくにとってそれは大事なことだったはずだ。
 けれど、思い出せない。この目の前に映し出されているものがいったい何なのか、見えているのに理解できない。
 ぼくはコントローラーをにぎっている。
 多分、ゲームのコントローラーだ。親指がなんとなく十字キーに触れている気がする。
 そう、ぼくはゲームをやっていたんだ。
「なんのゲームだったっけ?」
 ぼくは口に出して言う。けれど、思い出せない。目の前にくりひろげられているゲームがなんなのかわからない。
 指だけが、せわしなく動いている。
 十字キーを、ボタンを、複雑に押している。
 おなか空いた。
 ぼくはそう思ったけれど、コントローラーから手を離すことができなかった。
 ときどき親指が痛い。皮がむけているのかもしれない。親指がぬるぬるする。
 ぼくはそれを確認できない。目はテレビ画面に釘付けだった。四角い枠の範囲でしか、ぼくは目を動かせなかった。
 何かが聞こえる。ぼくのうしろの方だ。聞いたことがある気がするけど、思い出せない。
 話し声だった。二人の女の人がしゃべっている。
「どっちで聞いたんだっけ?」
 ぼくは考える。この二人の声は、ゲームの中から聞こえてくるのか、ぼくの部屋の外から聞こえてくるのか、と。
 ゲームの音だってうしろから聞こえてくることがある。スピーカーが五個もあるのだから。けれど、これはどっちだろう?
 テレビの画面に、影が映った。
 テレビの光は消えていた。
 いつから消えていたのかぼくには思い出せなかった。
「けんちゃん、何をしていたんだい?」
 テレビが消えて初めて、ぼくのうしろから声をかけてきてるのが、おばあちゃんだということに気づいた。
 テレビに映った影はおばあちゃんの影だった。
 さっきしゃべっていたのもおばあちゃんだったのだろう。
 もしかすると、もう一人の女の人はおかあさんだったかもしれない。
――まあ、ぼくにはどうでもいいことだ。
「ゲーム」
 ぼくはぼそりとつぶやく。ぼくはまだコントローラーをにぎっていた。指もまだせわしなく動いている。テレビの光がなくても、ぼくには関係がなかった。
「何をすれば終わりのゲームなんだい?」
 うるさいな。ぼくはこのゲームをクリアしなきゃならないんだ。もう少しでクリアできそうなんだ。
 もう少しでもう少しでもう少しでもう少しでもう少しで……。
「ねえ、けんちゃん、おばあちゃんにも教えてくれないかい?」
 ぼくは声を無視した。それどころじゃなかった。もう少しで全ての謎が解ける。もう少しでクリアできる。
 もう少しで――
 ボスを殺せる。
 スピーカーから音が流れてくる。敵が、ボスがやってきているという音だ。ボスはうしろからやってくる。
「ねえ、おばあちゃん、けんちゃんが何をやっているか聞いてみた――」
 ぼくは飛び上がった。からだをひねってうしろからやってきた敵に襲いかかる。右手でコントローラーを振りあげ、敵の顔めがけて振り下ろした――。

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創作日 9/18/2002
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