[PR]生年月日で2010年運命占い:初回無料!貴女の悩みを占い師に相談

40

差別



 あたしは猫だ。
 茶色と白のぶち模様の毛皮を持ってる。ご主人にいつも手入れされているから、毛並みはつやつやだ。近所のどの猫にも負けない。
 夕ご飯には、魚を食べる。ご主人はあたしの目の前で、平べったい魚を切ってくれる。ご主人は酸っぱいごはんの上に、その魚のひれの部分をのっけてくれる。
「ほら、君の大好きなえんがわだよ」
 と、ご主人はにこにこして皿を出してくれる。お皿にはきれいな模様がついてるけど、あたしは食べられないものには興味がない。なんか色がついてるなー、って思うだけ。ご主人は、「色が付いてる皿は、ちょっと高い皿なんだぞ」とか言うけど、人間のお金のことなんて、あたし、さっぱりわかんないし。
 ご近所を散歩したり、昼寝したり、お隣のおばあさんのところで甘いものをもらったり。そんなふうにしてあたしの一日は過ぎていく。そして、夜にはかならず、お皿の上の酸っぱいごはんと魚を食べるのだ。
 けれど、最近、あたしのまわりに変な奴がいる。
 あたしの散歩のあとをついてくる。あたしが塀の上を歩いていると、奴もその後ろを歩いてる。
 威嚇したこともあったんだけど、全然ダメだった。奴はまったく怖じ気づかない。
 気づいたらそばに奴がいた。名前なんて知らない。いつからいるのか、あたしには思い出せない。なんか、ずーっと前からいるような気もするし、つい最近見かけるようになった気もする。
 目をいろんな色に光らせたり、しっぽをゆっくりと動かしたり、奴は変な猫だ。
 私が威嚇すると奴も同じ格好をして威嚇する。なんだか、あたしのまねをしているみたい。
 あたしのまねをしても、あたしになんかなれないのに。
 ご主人に気に入られようって思ってるのかもしれないけど、いくらがんばったって、ご主人のえんがわはあたしの物だ。

 外が薄暗くなって、散歩をやめて戻ってきたとき、奴はあたしの後ろをついてきていた。追い払おうにも、何もできないので、あたしは完全に無視してた。
 ご主人がやってきた。
 あたしはご主人の足に身体をこすりつけて甘えた。思いっきり、精一杯、あたしはご主人に甘えた。
 ちらりと、横目で奴の方を見る。
 奴も、ご主人の足に身体をこすりつけていた。ご主人はあたしだけのもの。えんがわはあたしだけのもの。はまちもサーモンも、奴には渡さない。
 えいっ、と力を込めて、あたしは肉球で奴をはり倒した。
 奴はこてんっ、と倒れてもがきはじめた。
 奴は身体が固くて、自分一人じゃ起きあがれないってこと、あたしは知ってるんだから。
「こらこら。何やってるんだ」
 酢の匂いが近づく。
 あたしは首を引っ張られた。持ち上げられて、ご主人の顔が目の前に来る。手足をぶらりとしたまま、あたしはご主人の顔を見た。
 なにか、かなしそうな顔してる。あたしと目を合わそうとしない。
「もう、寿司あげることできないんだわ。バイト先、つぶれちゃってさ。でさ、収入もなくなった。だから、本物のペット、飼うことができなくなったんだ……」
 気がつくと、あたしはかごに入れられてた。
 ご主人と初めて会ったとき、あたしが小さかった頃に入れられたかごに似ている気がする……。
 がさっと音がして後ろを振り向くと、そこには見知らぬ人間が二人立っていた。あたしをじろじろと見てる。
「なんで……、なんで生き物を飼うのにそんなにお金が必要なんですか? 僕みたいな庶民は生き物を飼っちゃいけないってことですか!」
 ご主人の声だ。
「そこにいる疑似猫じゃ不満なのかね。しぐさも何もかもこの猫と同じにプログラムした。えさ代はかからない。寿司を猫にやるお金を他に使えば、もっと豊かな暮らしができるだろう」
「金が無い人間が猫を飼って何が悪いんですか! 貧富の差で……」
「経済的余裕が無い者には疑似猫を、余裕の有る者は猫を。そういう政策だ。君は命のあるなしで、差別するのか? 形もしぐさも完璧に同じなのに」
「た、たしかにそうだけど……」
 かごが持ち上げられる。あたしは奴の方を見た。
 奴は、いつのまにか、あたしと同じ、茶色と白のぶち模様の、毛皮を着ていた。

 次のご主人のところでは、えんがわを食べられるんだろうか。
 あたしはそれだけが気がかりだった。


.
創作日 12/8/2002
これは工房長co_metのオリジナルです。この作品の無断転載を禁じます。
[PR]解禁!サクラのいない直メなび:※男女タダで遊べる、大人のためのコミュ