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 夢を、夢をみていました。
 夢の中のあたしはいつも苦しんでいて、いつも泣いていました。
 あたしは夢の中のあたしの気持ちがわかります。夢の中だとしてもあたしはあたしですから。
 あたしは、怖かったんです。
 ずっとずっと続く痛み。
 決して終わらない痛み。
 生まれてきてからずっと、あたしは痛みとともに生きてきました。
 痛みがあるということは生きている証。
 生きるというのは、痛みを耐えるということ。
 あたしは、生まれても、どんなに頑張っても、十日も生きられないと言われていました。
 あたしは、医者の予想を裏切り続けました。
 十日が二十日に。一ヶ月に、一年に。
 そして、十年に。
 あたしは、生き続けました。
 ただ、生きるために生き続けました。
 けど。
 夢の中のあたしは、知ってしまったんです。
 あたしの人生には、意味がないってことを。
 何故、気づいてしまったのか。
 夢の中のあたしは、気づいてしまった事を後悔して泣き続けます。
 泣きすぎてもう涙がでなくても、あたしは泣き続けます。
 いつもあたしの腕に針を刺して血を抜き取っていく白い服を着た女の人が、もう一人の白い服の女の人にぼそりとつぶやいたのが聞こえてしまったのが悪かったのです。
 長時間あたしは痛みに耐え続けることはできません。
 夢の中のあたしは、医者の先生から、痛みから逃げる方法として寝ることを勧められていました。
 だからあたしは、一日の4分の3を眠りに費やしていました。
 寝るためのお薬をもらって。
 その時も、あたしは寝ているはずだったのです。起きているはずがなかったのです。
 けど。
 目をつぶるあたしの耳に、二人の会話が聞こえます。
「この子。かわいそうだけれど、今年で最後かな」
「そうね。今年も、またこの子と姿形の同じ子がこのベッドに寝ることになるんだろうね」
「こんな残酷な事を許す法律があるということが、最大の問題なのかもね」
「この子の親は、何を考えているんだろう」
 夢の中のあたしは、目を開けました。ゆっくりと上半身を起きあがらせて女の人と向かい合います。
「今の、どういう意味ですか?」
「かなちゃん。今、身体、痛い?」
 あたしは頷こうとしました。起きている限り痛みは常にあるからです。けれど、その時はあたしには痛みがありませんでした。
 とっさに、首を横に振ります。
女の人たちは顔を見合わせます。お互いに、『この時が来たか』という顔をしています。
 夢の中のあたしには、そのあとの記憶がありません。ただ、女の人から聞いた事実にショックを受けてひたすら泣いています。
 痛みに苦しみ、自分の無意味さに泣いています。ベッドに横たわりながら泣いています。
 唐突に。
 夢は、そこで終わります。
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「娘が生き続けるのを見ていたいからって、何百ものベッドに遺伝的病気で死んだ娘のクローンを収容し続けるとはね。そりゃあ、確率的には生き残る娘もいるだろうさ。死んでいって、ベッドの数が無くなって、最後の一人が死んでしまうまで可愛がり続けることはできるだろうさ」
 医者の横には少女が横たわっている。少女の脈は弱まり続けている。少女の傍らには親らしき人物が少女の手を握っている。
「最後まで生き残ったこの娘は、本当のことを知らされたら他の同じ娘達にどういう想いを抱くんだろうな」
「かな……」
 脈拍が消える。親らしき人物は少女にすがりついた。
「親として最低だよ。あんた」
 医者はいつものように少女を抱え上げて処理場に運ぼうとしたが、少女に触れる前に思い出す。
(今回の少女は最後の少女だから、葬儀をきちんと行うんだったな)
「ま、金さえもらえれば俺はなんでもやるがな」
 医者は百一枚目の死亡診断書を記入した。

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創作日 5/31/2002
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