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ある日、俺はごみ捨て場であいつを拾った。 ごみがたくさんあった場所だったというのに、あいつは体にごみをあまり付けていなかった。 捨てられてすぐに発見されたのだろうと、俺は推論した。 目をつぶっていて、死んでいるのかと思ったが、俺が体を強く揺らすとあいつは「ううん」とうめき声をもらした。 「救急車を呼ぼうか」俺があいつに聞く。 「ほっといてくれ」あいつはそう言った。 見た目が死にそうな奴を放っておけるほど、俺は非情ではない。俺はあいつの肩をかついで、自分のアパートまで運んでいった。 あいつは驚くほど軽かった。 ドアを手で押し開けて、そのまま玄関を抜けてひとつだけの部屋へと進む。俺はあいつを床に転がした。そして、俺は同じ部屋に備え付けてある台所へと向かう。 「何か食べるだろ」俺は戸棚にしまっていた缶詰を取り出した。 「いらない、そんなもの」あいつは寝転がったまま俺に背を向けて言った。 「うまいのにな」 俺は『そんなもの』呼ばわりされた缶詰のプルタブを持ち上げ、中の液体を一気に飲み干した。体に精気がみなぎってくる。 「で」 俺はあいつの顔側に回りこんで座った。あいつは俺と目が合うと、すぐに視線を下に落とした。 「なんであんなところにいたんだ?」 俺はさっそく本題に入る。あいつは体を起こして俺と相対した。あいつはあぐらをかいている。 「おまえのような奴に言うことではない」 あいつは俺のほうとは違う方向を向いて言った。俺はあいつの視線の先を追ってみたが、そこには壁しかなかった。 ただ俺の方を向いていたくないのだろう。そう俺は推論した。 俺は頭を掻いて、「あのさ」と言った。あいつの顔が一瞬こちらを向く。だが、すぐに視線をそらした。 「俺は、あんたを助けてあげたんだぜ?お礼の一言とかないのか?あそこにずっと寝ていたら、あんたはゴミ収集車につれていかれるところだったんだぞ」 「助けてくれなんて、一言も言っていない。ほっといてくれと言ったんだ。おまえはその命令を無視した。あやまるのはそちらのほうだろう」 あいつは俺の方を見ずに言う。 こんなことを見ず知らずの相手に言われたら、誰だって頭にくるだろう。俺だって例外ではない。俺はあいつの胸倉をつかんで持ち上げた。あいつは抵抗せずに俺のされるままになっていた。 「困っている奴を助けるのは、人として当然のことだろう?なぜ俺が謝らなくてはいけない?あんたは馬鹿か?」 「知った風な口を利くな。おまえは何も知らないんだ」 俺はあいつを放り投げた。あいつはゆっくりと放物線を描いて床に落ちた。 なんで、俺はこんな奴を助けようなんて思ったんだろう。 こんな横柄な奴は、今まで見たことがない。 「おまえ、最低な奴だ。さっさとどこかへ消えちまえ」 俺はうずくまっているあいつに吐き捨てるように言い、ソファに腰をおろして新聞を読み始めた。 「……」 あいつは動こうとしなかった。俺はそのまま放っておいて新聞を読み続けた。 なんて嫌な世の中になったもんだ。人に親切にされて礼もいわない奴が最近は多すぎる。 「………」 あいつが動く音が聞こえる。その音は扉のほうへ向かわずに、俺のほうに向かってくる。 「早く消えろよ」俺は新聞に目を落としたまま言った。 だが、あいつの音は俺のほうに依然としてゆっくりと近づいてきていた。 「いいかげんにしろよっ」 俺は新聞を放り投げて、立ち上がった。 「いいかげんにするのは、おまえらの方だよ」 俺は目を見張った。あいつの手にはスタンガンが握られていたのだ。スタンガンは激しく放電している。 俺はソファの上に立った。一足飛びにあいつの頭の上を越え、玄関へ向かった。あいつは急に俊敏になって俺を追っていた。 だが、ドアに手が届く前に、俺の目の前は暗転した。 男は足元に転がる金属製の物を蹴飛ばした。 「俺たち人間をごみに捨てたのはおまえらだろが。中途半端に残ったロボット三原則はたちが悪い」 |