神々の狂宴
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何が、何が起ころうとしているんだ。 私は対Gカプセルから這い出し、自分のおかれている状況を確認した。 艦内には、未だに侵入者が艦橋に向かって移動している。高加速度は侵入者にとって何の問題もないらしい。信じられないことだが、侵入者は艦内の運動と無関係の座標系にいるのかもしれない。 艦橋の艦外を映すモニターには、『ウニ』が映っている。リングから放たれた無数の光の槍に貫かれた青白い球体。『ウニ』となる前に向こうが送ってきた情報によれば、あれは『葵』だという。向こうのASDSはあれだけの攻撃を受けても、色を全く変えていない。強度を一定に保っている証拠だ。 あれは侵入者による差し金だろうか。 艦橋には私しかいない。他の人間はまだ対Gカプセルに入っている。侵入者と対峙するのは私だけで十分だ。向こうも艦橋に向かっているということは、この『水戸』の艦長、すなわち、私に用があるのだろう。他の人間がいると予測外の事態が起こるかもしれない。 「まあ、予測できる状態でもないか」 私は艦橋の中央にある椅子に座り、椅子を回転させて艦橋の入り口の方へ向けた。ちらりと横目で艦内図を見る。 もう少しで、侵入者が来る。 私は武器を何も持たなかった。武器など役にたたないだろう。 相手は異星人だ。それは間違いない。最初は木星衛星圏が秘密に技術革新を行ったのかと思った。しかし、これは技術革新で説明できるほどの技術差ではない。 私は艦内三番モニターを改めて眺めた。そこの艦内を映すはずのモニターは、宇宙を映していた。中央に醜く脈動する赤い恒星が映っている。それは恒星というより、巨大な生物の心臓に見えた。あれは何を意味しているのだろう。 来た! ドアがゆっくりと横にスライドする。 白いマントは返り血を弾きしたたらせている。緑色の髪は、それ自体が生命を持っているかのようになめらかに動いている。額には翡翠色一色でできたリングをはめ、両腕にも同じようなリングがはめられている。指先も顔も人間そのものだった。 −しかし。 首筋が異様に盛り上がっている。直径10センチくらいの細かく脈動した肉塊が、首にとりついているように見える。 「お前がこの移動物体の持ち主か」 男が私の事を指差して言う。 「ああ。私は火星連邦所属ラムダ級航宙艦『水戸』の艦長、一石だ」 「ふん、名前などどうでもよい。おまえがこの物体の所有者であることがわかれば十分だ」 男は私の方へ近付いてきた。私は椅子から立ち上がった。 「分かりきったことだが、一応、形式なので聞く」 「なんだ」 「おまえらの文明は重力制御技術を持っているか?」 重力制御技術?重力を操るということか?故意的に重力場を変動させるのは理論的に不可能ではないのか。グラヴィトンは直接的に検出することすらできない。間接的に物体の縮みで測定するしかない。それを操るだって?マクスウェル方程式の重力的適用?もしくは、ヒッグス場の特殊解?どちらともありえない。 「どうなんだ。制御できるのかできないのか。俺は状況証拠だけでは判断できない地位にいる。その文明に属する生命体からの証言が必要なのだ」 どっちみち、現在、私達人類は重力制御の技術は持っていない。 「私達人類は、持っていない。教えてくれるのか?」 「ふん、そうだろうな」 男は艦橋をつまらなそうに見回した。私はじっとその様子を見ていた。男は何かに気付いたのか、改めて私の方を向いた。 「おまえらの文明にも人工知能はあるんだろ」 「ああ。今は非常事態だから、人工知能自体は作動していないが…」 その時だった。艦全体が大きく震動し、一瞬のうちに艦橋の床から砲台のようなものがせり上がった。 『陽電子砲発射っ!』 停止させたはずの『瑪瑙』の声が艦橋に響き渡り、まばゆい閃光があたりを満たした。
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