神々の狂宴
| 急にあたりに人の気配が無くなった。 先程まで俺に向かってレーザー銃を撃っていた輩は、どこかへ消えてしまっていた。 これまでの相手の攻撃で、ここの文明レベルを知ることができた。 あとは、艦橋へ行くだけだ。 重力制御技術を発見していない割には、技術は進歩していると言える。しかし、こちらより優れているものは何一つ無く、技術的に得るものは無い。この程度では、我々と同盟を結ぶことはできないと結論できる。思想や文化レベルは、いまいちわからないが、得るものはないだろう。 やはり、当初の計画通りに、リングを使用することになりそうだ。 俺はもろい船の壁を壊さないように慎重に注意しながら(なにしろ、物体に保護フィールドを張っていないのだ)、いりくねった通路を艦橋にむかって進んだ。 二つに分かれている通路の分岐点に来た時、船全体が震動した。 何があったんだ? 俺は補助脳に事態の説明を求めた。 『周囲の物質が10Gで移動中』 人の気配が無くなった理由が理解できた。ここの艦長は、俺の反応を見るために高加速度をかけたのだろう。その理由も理解できなくはない。 俺が異種族なんかじゃなくて、人間だから。 艦長にとっては、俺の存在は理解できないに違いない。あきらかに俺は人間の姿をしているからな。スキャンをさせていないが、俺の遺伝子の99、9997%はここの人間と同じだし、彼等の言葉を解する。俺がこの高加速度にどう対処するかを見て、俺が何者かを判断するつもりなのだろう。 重力制御技術がないならば、俺だって致命傷を負うだろうが、重力制御技術があればこの程度の加速度はたいしたものではない。加速度など、所詮は重力と同じなのだ。 俺はあたりを見回した。壁の上の方に、巧妙に隠してあるつもりらしい観測機器を発見した。10Gの震動で、微妙に揺れている。 この辺で、埋めることのできない技術力の差を見せつけるべきだろう。 俺は手のひらを観測機器に向けた。 「重力変化」 周囲の空間が歪み、俺は球形の重力源を発生させた。それを観測機器の近くに浮かべる。重力レンズのはたらきをさせる。もう片方の手で他宇宙をひねり出し、重力レンズの焦点にあうように配置した。 やつらは、この光景を見てどういう反応をするのだろうか。 俺は、艦橋までの道のりを補助脳で確認して、ゆっくりと焦らずに歩いた。 『注意。AS炉搭載の宇宙船の接近を確認』 補助脳が、周囲の空間の彎曲率と高速移動する質点の位置を教えた。 『リングスタンバイ。接近する物体を消去する準備完了』 やってくれ。 俺は補助脳に命じた。 俺が用があるのは、この一隻だけだ。 通路は相変わらず単調なものだった。芸術性のかけらも感じられない。俺の好みからいうと、このような芸術性にかける構造物は、消滅させたいのだが、任務は艦の無傷での接収だ。必ず、一体は接収しろという命令だから、他の優雅さから程遠い船体は消滅させてもいい。 あと、5分もあれば艦橋に着くだろう。 いつの間にか、高加速度は終わっていた。 あきらめたのだろう。 |