IN THE BLUESKY


 一、逃走してた。

「おいっ!待ちたまえ!」

 土砂降りの雨の中、私はなぜか、白衣の人たちから逃げようと走っていた。

 なぜ、私は逃げているのだろう。何かしたっけ。

 高校生活最後の一年で停学なんてくらったら困るから、万引きだってここ数カ月はしていないし。

 それにしても、ここはどこだろう。見た事のないところ。

 私は必死に走りながら、あたりを見回した。

 月明かりしかないから、近くに電灯がないのだろう。もしくは、壊れているのかも知れない。地面はゴツゴツしている。コンクリート片みたいなものらしい。

 すごく走りにくい。

 走れば走る程、道はますますゴツゴツとしてくる。だんだん郊外へ抜けていっているのかも。後ろを振り返ったけれど、真っ黒で何も見えなかった。

 ふつう、誰かを追っているのなら、懐中電灯か何か、光るもので追っている相手を照らすけどな。照らしてくれれば、道がわかって楽なのに。

 逃げるのはやめて、なんで私の事を追うのかを尋ねれば、これ以上走らなくて楽だけど、

 私って、相手を知らぬ間に怒らせちゃうからなあ。

 今日は何をしたんだろ。

 記憶はまったくなし。

 捕まるとひどい目に遭いそう。

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 お腹がすいてきた。足がふらふらする。

後ろから追ってくる足音はまだ聞こえる。まったく、しつこいな。

 もうどのくらい走ったんだろう。人工的な明かりが、まったくないのが不気味。服はびしょびしょ。靴は水が入ってカポカポしてる。

 相手は疲れないんだろうか。私はなぜか、お腹はすいているけど疲れはない。

 これなら、来月のロードレースは大丈夫かも知れない。

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 今、思ったけど、逃げるより隠れる方が楽かも。

 私は、隠れられるような場所を走りながら捜した。瓦礫は沢山あって、隠れられそうに見えるけど、かくれんぼしているわけじゃないから、すぐに見つかる物陰のようなところはマズイ。

 月明かりって言っても、今日は半月らしくて、くらくって見えない。

「あ……」

 膝の力が急に抜けた。

 まさしく、カクッという擬態語がちょうどよい感じに。

 汚い雨水の水たまりに、うつぶせに倒れ込んでしまった。汚くて不味い水をのみ、むせ返った。両腕を使って立ち上がろうとしたが、足がまったく動かない。冷たいとか、気持ち悪いとかの感触もなくなってる。

 お腹がすきすぎて、あたりの景色がぐるぐるに回転しはじめた。次第に手も動かなくなってきた。顔を水につけないように持ち上げていた首も、支える力を失って、顔面からまともに水たまりに突っ込んだ。

 おでこが、堅い地面にあたって痛い。

 息ももちろん苦しい。

 背中を激しく雨が打ちつける。まるで、消防車の放水みたい。実際にはそんな体験はした事はないけど。って、冗談どころじゃなくなってきた。まだ遠くの方だけど、足音は着実に私の方へ近付いてきている。

 水たまりで窒息死するくらいなら、あの得体の知れない白衣集団に捕まった方がマシかな……。

 私は水たまりの中で、意識を失った。


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